こだわり抜いた洗練シャルドネ

規格外！ベテランのニューカマー？

2023年、マーティンボローに誕生した新星「オラテラ」。その創業メンバーは、マーティンボロを代表するワイナリー「ドライ・リヴァー」を造り上げた精鋭たちです。

2022年のワイナリー売却とともに、ワインメイカーだった彼らは新しいチャレンジに踏み切り、新ブランドのオラテラを立ち上げました。中心人物はウィルコ・ラム氏。これまでマーティンボロで土地の声、葡萄の声に耳を澄ましてきたベテランの造り手です。

そう、ワイナリー自体は新しい。しかし、つくり手は熟練の名手。このオラテラは、そんな、大手では出来ないこだわりを自らのマイクロワイナリーで実現した「遅れてやってきたニューカマー」なのです。

現地で話を聞いたときに印象的だったのは、「僕たちは土地の所有しているわけではなく、この土地を守っている。だから大きな循環の中にいるという意識が極めて大事なんだ。」という言葉。

バイオダイナミック農法やドライファーミング（無灌漑）を貫く姿勢からも、その思想は徹底しています。自然との対話から生まれるワインには、果実味を超えた「質感」があります。

栽培・醸造

McCreanor Vineyard（マーティンボロ）にて、3月下旬に手摘みされたシャルドネを、翌日冷却後プレス。軽く澱引きされたジュースは、300〜500Lの大樽で自然発酵され、翌年の収穫が始まるまで熟成。その後さらに1000Lの大型オーク樽に移し、澱とともに4ヶ月追加熟成されています。

春のマロラクティック発酵は自然に始まり、酸の輪郭が柔らかく整えられます。 アルコールは12.5%、pH 3.41、総酸5.8g/L。 構造はクラシック。「非常に純度の高いシャルドネ」と言えるでしょう。

テイスティング

グラスを回すと、まず現れるのは控えめながら明確なオークの香り。そしてフェンネルシードのようなスパイス感と白桃の果実香が立ち上がります。ヌガーや焼いたパイ生地のような、香ばしく甘いニュアンスも重なってきます。

口に含んだ最初の印象は、やわらかく、ふくらみのあるテクスチャー。 遅れて伸びやかな酸が現れ、味覚をシャープに目覚めさせながら、後半に感じる果実の厚みや熟成由来のクリーミーさと融合していきます。 余韻は長め。樽の存在を鼻腔の奥にしっかりと感じ、上顎に張り付くようなミネラル感が全体を引き締めています。

ペアリング

このワインは、主張しすぎず、しかし確かな存在感で料理の細部に寄り添う名脇役となるでしょう。

ホタテのポワレ 白ワインとフェンネルクリームソース → ワインに潜むフェンネルのニュアンスが、ソースの香りと美しくリンク。ホタテのふっくらとした身と、シャルドネのやわらかい質感が溶け合います。

鶏のバロティーヌ（中にハーブや野菜を巻き込んだ鶏肉のロール） → クリーミーなソースやゼラチン質を含む鶏肉の食感に、ワインの酸とオークのまろやかさが寄り添い、軽やかな余韻を与えます。

甘鯛のうろこ焼き 白味噌ソース添え → うろこのパリッとした香ばしさと、白味噌のほのかな甘みが、ワインの樽由来のナッティさと見事に調和します。

ポークジンジャー レモンソース仕立て → ジンジャーのスパイスとレモンの酸味が、シャルドネの柑橘系の明るさと重なり、口内でフレッシュなリズムを生みます。

１万円弱という価格にきちんと「理由」がある──そう実感できる1本です。 名門ドライ・リヴァーで培ったその「思い」「技術」が新たなステージで花開いていく。いずれはNZを代表する生産者になる風格を持っていると感じます。

その第一歩となるこの「素晴らしく品の良いシャルドネ」を、ぜひ味わってみてください。もちろん、長期の熟成も期待できます！

ワイナリー「オラテラ」について

黄金の大地が生む、洗練と野性のマーティンボローワイン

オラテラは、ニュージーランド北島ワイララパ地方・マーティンボローに誕生した、新進気鋭のワイナリーです。その始まりは2024年10月。名門「Dry River」で共に腕を磨いてきた6人のチームが、独立と再挑戦の志を胸に、地元マーティンボローで新たなプロジェクトを始動させました。

彼らが拠点としたのは、かつて「On Giants’ Shoulders」の名で知られた歴史ある畑。その土地を継承しつつ、オラテラ（Oraterra＝「黄金の大地」）という新たな名前を掲げ、「大地の持つエネルギーに忠実であること」を信念に、今この地の魅力を再定義しようとしています。

土地を尊び、介入を最小限に

オラテラのワイン造りは、徹底した土地との対話から始まります。彼らは自らを畑の「守り手（kaitiaki）」と捉え、農薬や化学肥料を一切使わない有機栽培、そして月の満ち欠けや天体の動きを意識したビオディナミ農法を採用。さらに、ブドウ樹が自力で水や養分を探す力を信じて灌漑は行わず、自然と共にある再生型農法を実践しています。

この「干渉しない」姿勢は醸造においても徹底され、野生酵母による自然発酵、樽熟成、瓶詰めまで、必要最小限の人為的操作にとどめています。結果として生まれるのは、土地と気候、そしてヴィンテージの表情を真正面から映し出す、緻密で芯のあるワインです。

視覚と味覚のコラボレーション

オラテラのラベルには、醸造家が抱いた「味わいのイメージ」をマーティンボロー在住のアーティストがビジュアル化したアート作品が採用されています。ワインごとに異なるラベルは、まさにそのボトルだけの“表紙”とも言える存在。アートとしてもコレクションしたくなるような美しさと意味を持っています。

土地と人へのリスペクト

オラテラは単なるワインブランドではなく、地域コミュニティとの共生を重視した「土地に根ざすプロジェクト」でもあります。地元の学校、職人、マオリのハプ（共同体）との連携を大切にしながら、地域経済や文化との循環を築いています。

産地ワイララパについて

「ワイララパ」は、NZの北島南東部に位置し、首都ウェリントンから車で 約1時間というアクセスの良さもあり、リゾート地としても人気の地域です 。

この地方にあるサブリージョン「マーティンボロ」は、気候や土壌の条件がフランスの「ブルゴーニュ」とよく似ており、世界でもトップクラスのピノ・ノワー ルの生産地として知られています。

オラテラ マーティンボロ シャルドネ 2023（Oraterra Martinborough Chardonnay 2023）