奥行きを求めた質感の高いSB

フォリウム ソーヴィニヨン・ブラン リザーブ 2023

日本人醸造家・岡田岳樹さんが、マールボロで手がける小規模ワイナリー「フォリウム」。

そのスタイルの根底には、独立前に務めていたワイナリー クロ・アンリ での経験があります。クロ・アンリは、フランス・ロワール地方の名門アンリ・ブルジョワが国外進出の地として選んだワイナリー。マールボロにいながらも、典型的な華やかなアロマを追うのではなく、滋味深い旨みを大切にするロワール的な哲学を受け継いでいます。

岡田さんはそこで修行を積み、フルーツ感に頼りすぎないワイン造りを体得しました。そのスタイルは、フォリウムのすべてのワインに息づいていますが、とりわけこの「リザーブ」で鮮明に現れていると感じます。

1996年に植えられた樹齢の高いソーヴィニヨン・ブランから生まれる一本は、キリリとした酸味に支えられながら、層をなす旨みがじわじわと広がります。余韻はしっかり深い。フルーティーさは控えめでありながらも、滋味に満ちた「大人のソーヴィニヨン・ブラン」です。

味わいの特徴

口に含むと、まずレモンのような爽やかさが広がり、洋梨のふくよかさがそれをやさしく包み込みます。後半にはカモミールを思わせるハーブ調の落ち着きが顔を出し、ワインに独特の奥行きを与えます。果実味は穏やかですが、旨みが幾重にも折り重なり、飲み手をじっくりと引き込みます。たいへん質感の高いワインと言えるでしょう。

ペアリング

このワインの魅力は「やさしさと滋味」。料理も、そのニュアンスを引き立てる組み合わせが似合います。

• 白身魚のカルパッチョ 新鮮な鯛やヒラメの薄造りに、オリーブオイルと柑橘をひとたらし。ワインの酸が魚の甘みを引き出し、清々しい余韻が続きます。
• 鶏肉のグリル 塩とハーブでシンプルに焼いた鶏もも肉。香ばしさとジューシーさを、ワインの酸と奥行きがきれいにまとめます。特にローズマリーやタイムとの相性は抜群。
• 野菜のフリット アスパラガスやズッキーニの軽やかな苦味が、ワインのカモミール的なニュアンスと共鳴します。揚げ油のコクも酸味がさらりと洗い流してくれます。
• 白カビチーズ（カマンベールやブリー） ミルキーな質感がワインの旨みと重なり、双方がまろやかに溶け合います。熟成が進んだタイプはより相性が良いでしょう。

「フォリウム ソーヴィニヨン・ブラン リザーブ 2023」は、派手さを求めないスタイルの中に、しっかりとした深みを持つ一本。

ロワールゆずりのワイン哲学を背景に、マールボロの土地でしか出せない果実感を重ね合わせている。そんな、唯一無二の存在感があります。 

ワイナリー「フォリウム」について

フォリウム・ヴィンヤードは、2010年6月にニュージーランド南島の北東部、マールボロ地方のブランコット・ヴァレーに設立された8ヘクタールのワイナリーです。

日本人の栽培・醸造家である岡田岳樹さんが中心となり、ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールのワイン生産に取り組んでいます。

マールボロの気候は、上質なソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの栽培に理想的です。生育期間中の昼夜の温度差が大きいため、ブドウは高い自然の酸味を保ちつつ、芳香と風味成分を蓄積できるのが特徴です。

ワイナリーの土壌は、氷河期の氷河の移動と古代の河川によって形成されました。ブランコット・ヴァレーの粘土質を多く含む土壌は、ブドウの生育を適度に抑える特性があります。この土壌は乾燥した夏でも十分な水分を保持し、ブドウの生育のバランスを保つことができるのです。また、マールボロ地方の他の畑に比べ高い密度で苗木を植えることで、より凝縮した味わい豊かな果実の生産を実現しています。

環境への配慮も重要視しており、2014年に有機農業認定機関「Biogro」の認証を取得。ニュージーランドのクリーンな環境を維持するため、有機農法を実践しているのが特徴です。

岡田氏は「高品質なワインを造る一番の近道は高品質なぶどうを育てることです」と語ります。畑では徹底した収量制限を行い、葉を適切に管理することで日光の当たり具合を調整。秋には完熟した果実を全て手摘みで丁寧に収穫するこだわりを持っています。

フォリウム・ヴィンヤードの哲学は、「ワイン造りは畑から始まる」という信念に基づいています。収穫したぶどうの個性を最大限に生かすため、醸造過程での人為的な介入を必要最小限に抑え、フォリウム・ヴィンヤード独自の土地の特徴を反映したワインを生み出すよう努めています。

この日本人生産者による丁寧なアプローチは、マールボロの土地の特性を活かしながら、独自の品質と個性を持つワインの生産に成功しているのです。

岡田さんと当店ソムリエ岩須

 産地マールボロについて

「マールボロ」は、NZのワイン産地の中心地です。

豊富な日照量や、1日の中での寒暖差が大きいことなど、ぶどうの生育環境にとって好ましい自然の条件が揃っており、マールボロではNZワインの8割以上が生産されています。

その中でも、キリッとした酸味と溢れる果実味が特徴のソーヴィニヨン・ブランは圧倒的な生産量を誇り、唯一無二のキャラクターとして世界で広く愛されています。また赤ワインでは、豊かなベリー系の果物の味わいが魅力のピノ・ノワールが人気です。

フォリウム ソーヴィニヨン・ブラン リザーヴ 2023（Folium Sauvignon Blanc Reserve 2023）