海を感じるアルバリーニョ

アルバリーニョは、もともとスペインやポルトガルがあるイベリア半島沿岸が発祥の品種で、キリッとした酸味、爽やかな柑橘や桃などの果実の風味、豊富なミネラル感が特徴として挙げられます。

海岸沿いで上手に育ち、さらにシーフードとの相性が良いことから「海のワイン」という異名を持っています。

近年では、日本の新潟や山形などの沿岸でもアルバリーニョの栽培に成功しているワイナリーが出現。日本のワインファンの中でも注目を集めています。

そんなアルバリーニョ、ニュージーランドでもじわじわと広がりを見せている品種でもあります。

海に近い産地ばかりのニュージーランドの中でも、マールボロやネルソンなどの南島のエリアがメインですが、今日紹介するのは北島ギズボーン産。

ギズボーンでも、品種の魅力をしっかりと発揮しているアルバリーニョのワインがつくられています。

色合いは淡いグリーンイエロー。

香りは、フレッシュなライムのような柑橘香、そして桃やスモモの核果のニュアンスも感じます。

口に含むと、心地よい酸味とともに果実の風味を感じますが、決してフルーティーすぎない印象です。

余韻には、ミネラルウォーターを飲んだ後のような口中を乾かすドライな印象、そして岩塩を思わせる塩味が残ります。

「海のワイン」の異名はこのワインにも当てはまると言えるでしょう。

通常のニュージーランドワインならば、もう少しフルーティー寄りに仕上げることが多いですが、このワインはボーンドライと言える辛口。

品種の特性を引き出し、食事との相性を高めようとチューニングしていることがうかがわれます。

ペアとなる料理は、やはり魚介類がよいです。

・ハマグリと菜の花のオイルソースパスタ
・タコとサニーレタスのサラダ
・ヤリイカの香草フリット（レモンを添えて）
・ハタハタのエスカベッシュ

こんな料理とぜひあわせてみてください。

ワインのミドルネームに採用されている「ベル・リンガー」は、直訳すれば「鐘を鳴らす人」ですが、「鐘を鳴らして祝うもの」「大成功」の意味も持ちます。

そして、ぶどう畑を管理するのは、ダグ＆デルウィンのベルさん夫妻。醸造家は、出来上がったワインが「まるでベルさんの名前のように、鐘の音を思わせる純粋さがある」と感じたそうです。

その印象から、ベル・リンガーに「ベルによる大成功のワイン」という意味合いを持たせたのでしょう。

ちなみに、ぶどうのルーツはポルトガルではなくスペイン。ベルさん夫妻の畑では、スペインにルーツを持つMSクローンを採用しています。

ポルトガルのアルバリーニョは、どちらかと言えば瑞々しくあっさり、スペインはリッチでミネラリーなワインになる傾向があります。

このワインは、そんなスペイン・アルバリーニョの特徴を生かした飲みごたえのある味わいになっていると感じます。

畑はギズボーンにありますが、クーパーズ・クリークの醸造所の所在地はオークランド。

ぶどうは手摘みで収穫された後、素早くオークランドまで運び、ステンレスタンクで発酵。熟成期間はほぼ設けず、フレッシュなまま瓶詰めされ、出荷されています。

ワイナリー「クーパーズ・クリーク」について

クーパーズクリークは、1980年にニュージーランドで設立された家族経営のワイナリー。オークランドから北西に車で約25分のフアパイとクメウ地方に位置します。

創業者のアンドリューとシンシア・ヘンドリー夫妻は、ニュージーランドの冷涼な気候を活かした最高品質のワイン生産を目指してワイナリーを運営。アンドリューのワイン業界での経験とシンシアの自営業での成功が、ワイナリーの成功への鍵となりました。

4ヘクタールの土地でシャルドネとメルローを栽培を始め、1982年に最初のヴィンテージを生産。その後すぐにローカル市場に出荷されました。

1980年代、ワイナリーは着実に成長し、ホークスベイに2つ目のぶどう畑を取得しました。

また同時に、国内にある主要なワイン産地の畑との関係を築き、ワインのポートフォリオを拡大しています。彼らは、常にぶどうが最も良く育つ地域から調達することを重要視しており、これは生産されるワインにも反映されています。

1990年代には、品質の高いワインを提供する小規模ワイナリーとして高い評価を得ます。数々のワインショーでの成功を背景に、10年間で最も優れた中小規模ワイナリーの一つとして認められました。

また、海外市場との提携を積極的に模索。これらの努力が実を結び、1997年にはニュージーランド政府から特別表彰を受けました。

特に、多くの賞を受賞した彼らのアルバリーニョは、彼らの革新的な精神の象徴となっています。

2022年に、トイトイワインズを設立したジョイス家と合併し、マールボロ・ワイン・グループの一員となりました。グループのワインメーカーであるアント・マッケンジーが、クーパーズクリークの名声を築いた品質、スタイル、伝統を守りながら、ワイン製造を管理しています。

現在も家族経営を続け、創業時の理念を大切にしながら人気ワイナリーの一つとして成長を続けています。

そのワインは世界中で販売され、ロンドンからロサンゼルス、トロントから東京まで、多くの場所で入手可能です。

産地ギズボーンについて

「ギズボーン」は、世界で一番日付変更線に近い都市であり、NZ北島東海岸に位置する小さなワイン生産地です。

この地域では主にシャルドネが生産されており、「シャルドネの首都」とも呼ばれています。

その他には、シュナン・ブラン、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリなど、アロマティック品種の生産に力を入れています。

クーパーズ・クリーク ベル・リンガー ギズボーン アルバリーニョ 2020（Coopers Creek “Bell-Ringer” SV Gisborne Albarino 2020）