ピノファンに捧げる
このセットは、ニュージーランドのピノ・ノワールをこよなく愛するソムリエが選んだ、こだわりたっぷりの6本セットです。
ピノ・ノワールというぶどう品種が大好き、という方や、これからピノ・ノワールの美味しさに触れてみたいという方のために企画しました。
また、NZのピノのバリエーションを知りたい、という上級者の方にもきっと満足していただけるのではと思います。
まずは、ピノ・ノワールというぶどう品種について、簡単に説明します。
ピノ・ノワールとは?
主に赤ワイン用に使われる黒ぶどう(皮が黒に近いぶどう)の1品種で、原産はフランスのブルゴーニュ地方です。病気に弱く、長年ブルゴーニュ地方以外で育てるのは難しい品種と言われていましたが、栽培技術が向上し、現在では、世界のさまざまな地域でつくられています。
ぶどうの特徴は・・・
- 皮が薄い
- 色素があまり濃くない
- 酸味がやや強い
これらが他のぶどうとピノ・ノワールの大きな違いです。
そして、ピノ・ノワールから作られたワインの特徴は・・・
- 明るい色調 ・渋みが少ない
- 小さな赤い果実(ベリー類やさくらんぼ等)のニュアンスが中心
- 凝縮感の強いタイプや熟成したタイプでは、複雑なスパイスや森の下草、枯れ葉、トリュフのような香りが出る
総じて、「優しくてエレガントな印象の赤ワインになりやすい」のが、ピノ・ノワールの特徴である、と言えます。
さらに、もうひとつ。
ピノ・ノワールは「産地の個性がでやすい」品種である、ということが大きな特徴です。ここ大事!!
同じピノ・ノワールと言えども、ぶどうがつくられる場所が変われば、香りや味わいが、本当にガラッと変わってくるのです。
今回ボクモワインで、この「ピノオンリー6本セット」を作ることになったのは、この「ピノって産地によってぜんぜん味わいが違ってくる」という、めちゃくちゃ面白い!(と僕が思う)特色をぜひ共有したい、と思ったからです。
現在、ニュージーランドのワイン産地の中で、大多数の産地で、ピノ・ノワールが育てられています。 ニュージーランドの面積は、日本の3/4くらい。南北タテに長い2つの島の中には、気候も土壌もさまざまなワイン産地が点在しています。
当然、それぞれの産地で、個性が出て、違ったスタイルのワインになるわけです。
この「スタイルの違い」を、ぜひ感じていただきたい!
そう思って、今回、かなり味わいの異なるピノ・ノワールをセレクトし、セットを組みました。
初めての方には、「違う味だ!」と感じていただけると思いますし、ピノ好きの方には、バリエーションの違いの楽しさを感じていただけるではないかと思います。
それでは、ここからは、NZピノの主な4産地の特徴をお伝えしつつ、その4産地から選んだワインを紹介していきます。
まずは、外せない定番・マールボロから。
マールボロ(南島)
NZを代表する産地で、国内でもっともたくさんのピノ・ノワールが作られています。 マールボロのピノは、全体的に「ラズベリーやスモモなどのフルーツの凝縮感がある」香り・味わいになることが多いです。果実のニュアンスが強めで、比較的親しみやすいワインに仕上がる傾向があります。
価格は、国内最大の産地だけあって、リーズナブル路線から高級路線まで、幅広いです。初心者から、上級者まで楽しめるバリエーションがあることもマールボロの良さですね。
このセットでは、マールボロ産のピノ・ノワールを6本中3本選びました。価格は、4,000円台2本と、7,000円台1本(他の産地の3本はすべて4,000円台です)。
まず1本目は・・・
美しい自然派ピノ
マヒ マールボロ ピノ・ノワール 2019
マヒとはマオリ語で「工芸品」。ラズベリーのようなフルーツの香りとともに、クローブをはじめとするスパイスの要素が、層のように重なって、独特の風味を生み出しています。
僕が実際にワイナリーを訪れ、その作りに感動したワインが、このマヒのピノ・ノワール。ぶどう畑は、バイオダイナミック農法を取り入れてながらも、醸造は、非常にテクニカル。慎重に温度コントロールをしながら、野生酵母で発酵をします。味わいの中に「ナチュラル」と「洗練」が同居しているのは、オーナーである醸造家ブライアン・ビックネル氏の技術のなせる技だと思います。
あわせる食事の守備範囲はかなり広いですが、ジビエや牛、ラムがあれば完璧ですね。根菜を使った和食、マグロなどの赤身の魚もぴったりあいます。
2本目は・・・
ベリーの香り漂います
②アンツフィールド シングル ヴィンヤード ピノ・ノワール 2020
マールボロでいちばん歴史あるワイナリーをイケメンのカウリー兄弟が復活させ、現代的なワイナリーに回収したのがアンツフィールド。このピノは、豊かなベリー系の果実味があり、スパイシーさと複雑な旨みを持っています。少しアルコール度数が高い分、味わいはやや濃厚に感じられ、余韻もかなり長いです。どっしりしたピノ、という印象を受けるかも知れません。
あわせる食事は、鶏肉、豚肉料理がよいですね。焼き鳥(タレ)、チキンカツ、ポークソテー、豚の角煮などはバッチリでしょう。
同じ価格帯ですが、マヒは、ナチュラルでやや繊細なピノ、アンツフィールドはフルーツの強さ・重さがあるピノなので、飲み比べるとその対比が感じられると思います。
3本目は・・・
職人技で作られた芸術的ピノ
③グレイワッキ ピノ・ノワール 2020
僕が現地を訪れ、感動したワイナリーのひとつ。NZワインを代表する「クラウディ・ベイ」で長らく醸造責任者をつとめたケヴィン・ジュッド氏が立ち上げたブティックワイナリーです。
マールボロの良さを知り尽くした彼が生み出すピノは、うっとりしてしまうような美味しさがあります。
アメリカンチェリーやプラムのジャムのような凝縮感したフルーツに、シナモンやカカオのフレーバーが加わります。力強さとエレガントさが同居しているイメージ。余韻もとても長く、至福の味わいがじんわりと続きます。
まさに、特別な日の1本とも言えるこのワインにぴったりなのは、複雑な旨みを持ったお肉料理。鴨、牛、ラムなど。上質なお肉を選んであわせれば、多幸感が溢れること間違いなしです。
最初の2本(マヒとアンツフィールド)よりも、さらに複雑な旨みを持ちながら、美しくまとまった味わいを感じられるのではないかと思います。
続いての産地は・・・
マーティンボロ(北島)
ワイララパという地域の中にある、とても小さな産地。
本場ブルゴーニュに非常によく似た気候条件を持っているのが特徴です。生み出されるピノ・ノワールは、繊細な味わいのものがメインです。ベリー系フルーツの香りと、シナモン、クローブ、ミント、カカオ、なめし革のようなアロマが調和しています。
より本格的なピノ・ノワールの奥深さを楽しみたい、という方には、このマーティンボロ産を、ぜひお薦めしたいです。生産者が少ないのが玉にきずですが。
マーティンボロからは、この1本をセレクト。
鴨肉と完璧なペア
④アタランギ クリムゾン ピノ・ノワール 2020
マーティンボロを代表するワイナリーのひとつアタランギ。ここのピノは、「ニュージーランドのロマネ・コンティ」と呼ばれたこともあり、ブルゴーニュに比肩する味わいをつくるワイナリーとして知られています。
その中で入門的位置づけのピノのがこのクリムゾンです。入門とは言え、その香りと味わいのエレガントさは目を見張ります。ラズベリー、さくらんぼ、クローブ、シナモンの混ざり合ったような香りは、とても魅力的。ほどよい酸味を伴っていて、余韻はやや長いです。ヨーロッパ風の洗練された味わいと評されるピノですね。
ブルゴーニュのピノと同じく、鴨肉のローストは完璧のペアとなります。鶏肉の香ばしいグリルも良好な相性です。まぐろとアボカドのユッケなど赤身の魚もGOODだと思います。
続いてはこちらも名産地!
セントラル・オタゴ(南島)
フランスを驚かせる高品質ピノを生み出す産地。世界三大ピノ産地のひとつとも言われます(他はブルゴーニュとオレゴン)。とても冷涼な気候ながら、夏の日照量は豊富で雨が少ないため、ピノ・ノワールの栽培に向いています。広いエリアに、ぶどう畑が点在しているので、それぞれの場所で性格は異なるのですが、ざっくり言うと、やや力強いタイプのピノが多いです。カシスのような甘酸っぱさ+スパイスや苔、トリュフを思わせる、奥深い味わいが特徴的と言えるでしょう。
セントラル・オタゴからはこの1本を選びました。
お肉専用!?コク旨ピノ
⑤インヴィーヴォ セントラル・オタゴ ピノ・ノワール 2019
アメリカでの受賞歴があるピノで、どちらかと言うと、カリフォルニアなどの「しっかり系ピノ」が好きな人はきっと気に入る味わいだと思います。
口当たりはソフトですが、旨みが強くて余韻も長め。カシス、アメリカンチェリーのようなはっきりとした果実の風味に、腐葉土やカカオのニュアンスが加わり、やや濃い味わいに仕上がっています。アルコール度数が高いこともあって、ひとくちの充実感もあります。「ぎゅっと凝縮したフルーツ感たっぷりのピノ」と言えるでしょう。
お食事は、鶏、豚、ラムの料理全般に合うと思います。焼き肉や煮込み料理はバッチリ。意外なところではウナギの蒲焼きにもいけますよ!
さあ、ラストの産地は、ちょっと穴場的存在のこちら。
ネルソン(南島)
最大産地のマールボロに近い港町ネルソン。エリアは小さいですが、優良な小規模生産者がちゃんと存在しています。ネルソンのピノは、いちごやブラムのような親しみやすいフルーツの香りを持ち、優しくまろやかな味わいに仕上がることが多いです。
そんなネルソンから選んだ1本は・・・
ナチュラル製法のピノ
⑥ノイドルフ トムズブロック ピノ・ノワール 2019
ナチュラルな製法にこだわり、無清澄、無濾過で瓶詰め。ラズベリーやイチゴなどのフルーツのまろやかさが口いっぱいにひろがります。シナモンなどのスパイシーさ、土っぽさも感じられますが、全体としては丸みのある味わい。
ノイドルフは、ネルソンのピノは「UMAMI(旨み)」が強いのが特長だと評していますが、まさにこのピノもしっかりとした旨みがあります。飲み飽きずに、思わずすいすい進んでしまうピノ・ノワールだなと思います。
お食事とのペアリングは、港町ネルソンのワインということもあって、魚介が意外とイケます。白身魚のトマトソースがけ、シーフードピッツァ、ぶりの照り焼きなどは、ばっちりだと思います!
まとめ
以上の6本セットを、ざっくりまとめますと・・・
◆エレガント&ナチュラル
マヒ マールボロ ピノ・ノワール
◆フルーティーで濃厚
アンツフィールド シングル ヴィンヤード ピノ・ノワール
◆洗練されていて重層的
グレイワッキ ピノ・ノワール
◆ブルゴーニュに比肩する品の良さ
アタランギ クリムゾン ピノ・ノワール
◆お肉にあうコク深いピノ
インヴィーヴォ セントラル・オタゴ ピノ・ノワール
◆ナチュラルで旨みが強い
ノイドルフ トムズブロック ピノ・ノワール 2019
と、6本それぞれ別の魅力を持つピノをぜひ、楽しんでください!