レモン風味の弱発泡

このワイン、ジャンルとしては「ペット・ナット（＝ペティヤン・ナチュレル）」。昔ながらのスパークリングワインの製法で、発酵途中のワインを瓶詰めして、瓶の中でガスをワインに溶け込ませるというシンプルなつくり方をしています。

このペットナットは、多くの場合は濁りがあり、味わいは果実味が豊かになる傾向があります。そしてだいたいは王冠で栓がしてあります。

このワインもその特徴をすべて備えています。

中でも特筆すべきは、フルーティーさです。まるでレモンの果汁が含まれているような、はっきりしとしたクエン酸の酸味を感じます。例えるならば「大人のレモンスカッシュ」。酸っぱさで口がきゅっとすぼまります。

甘みはほとんどなく、柑橘のフルーツ感がしっかり。後味にレモンのワタの部分のようなほろ苦さがほんのりあります。

香りの中には酵母に由来するパンのような香ばしさもあり、シンプルな果実味だけではない複雑さを感じることができるでしょう。

汗をかいた暑い夏の日、しっかり冷やして飲むのにぴったりな味わいです。

あわせる食事は、グリーンサラダや、白身魚や海老、ホタテのカルパッチョはばっちりでしょう。

また、から揚げやフィッシュアンドチップス、トンカツのような揚げ物にもよくあいます。レモンを搾って美味しくなるような料理ならば、何でもあいますよ！

ちなみに、ペットナットは「泡があまり持たない弱発泡のスパークリング」です。

このワインも、開けたてはしっかりとシュワシュワ感を感じることができますが、２日目はだいぶ泡が弱くなります。

ただ、味わいは変わらず美味しく飲めます。３日くらいかけて、泡が減ってスティルワインになっていく過程を楽しんでもよいワインかなと思います。

つくり手のマラソンダウンズは2021年設立とかなり新しい生産者。ジェスとニックの若いカップルが二人で運営しています。

人の手の介入を極力抑えたワインメイキングを目指し、これまでのマールボロのワイナリーがやってこなかった、ナチュラルワインのジャンルの製品をつくることにチャレンジをしています。

おそらくこれから進化をしていくマラソンダウンズの最初期のワイン、ぜひ味わってみてください。

ワイナリー「マラソンダウンズ」について

マラソンダウンズは、コロナ禍におけるロックダウンのフラストレーション、そしてワイナリーのオーナーであるジェスとニックの情熱によって2021年に誕生しました。それ以来ラインナップを成長、進化させながら、手作りでユニークなワインをつくっています。

ワイナリー名の「マラソンダウンズ」とは、ジェスの家族がマールボロのアワテレ・ヴァレーで経営する農場の名前で、彼女はその農場の4世代目です。

彼女の家族は120年以上その土地に住み、羊、牛、そして耕作用作物を農場で育て、契約栽培者としてワイン用ぶどうも栽培していました。

ジェスとニックが心がけているのは、人の手の介入を極力抑えること。思慮深く、そして熱意を持ってワインをつくっています。発酵には野生酵母を使用し、オークの古樽で熟成。すべてのワインは清澄しておらず、濾過は最小限にとどめるか無濾過で瓶詰めされます。

環境の持続可能性も重要視しており、軽量のグリーンガラスやリサイクル性の高いコルク栓を採用。また、彼らの農場では生物の多様性を高めるために、毎年樹木を植えています。

産地マールボロについて

「マールボロ」は、NZのワイン産地の中心地です。

豊富な日照量や、1日の中での寒暖差が大きいことなど、ぶどうの生育環境にとって好ましい自然の条件が揃っており、マールボロではNZワインの8割以上が生産されています。

その中でも、キリッとした酸味と溢れる果実味が特徴のソーヴィニヨン・ブランは圧倒的な生産量を誇り、唯一無二のキャラクターとして世界で広く愛されています。また赤ワインでは、豊かなベリー系の果物の味わいが魅力のピノ・ノワールが人気です。

マラソンダウンズ ソーヴィニヨン・ブラン ペットナット 2022（Marathon Downs Sauvignon Blanc P ét Nat 2022）