今年は9月に長野の上高地に行って、やはり旅は良い、と実感した。
しかし、日常生活に戻ると、家と職場の行き来の繰り返し。
店、通販、ラジオ。仕事は永遠に片付かないし、隙間を作る余裕もない。
旅に行った直後は「日々を豊かにするためにも、また旅に行こう」と思ったあの気持ちが、いとも簡単にしぼんでいるのに気付いて、なんだかがっかりしてしまう。
やはり「よし、行かねばならぬ」という強い気持ちが生まれてこないと、このヘビー級の腰は動かないな、と。
もちろん、ニュージーランドには早く行きたい。現地のワイナリーをひとつでも多く見て回りたい。
では、近場で「行かねばならぬ」、何かないものか。
そう思っていたところ、昨日のカウンターでちょっと面白いことがあった。
オープン直後にやってきたのは一人の男性。
「この店に来たかったんです」と言って、自分のことを喋ってくれた。
去年まで12年間、ニュージーランドで料理人をやっていて、日本に戻ってきた。地元は名古屋。
今、奥さんの実家のある長崎の佐世保で、飲食店を開業する準備をしている。
店では大好きなニュージーランドワインを出したい。どうしたら手に入るのか知り合いに相談したら、通販のボクモワインの存在を教えてくれた。
調べたら、名古屋にボクモというワインバーがある。これは、どんな店か調査せねば。インスパイアを受けたい。
そんな動機で来店したとのこと。
もちろん話が弾まないわけはない。
シェフ渾身の新作ラムバーグ&赤ワインのペアリングも楽しんでもらいながら、話題は、食材、仕入れ、フード・ドリンク比率、内装など、あっちこっちに広がった。
そして、僕が知っている限りのニュージーランドワイン界隈の情報をお伝えした。
開業する店は、ボクモの2/3くらいの大きさで、手打ちパスタがメインの店になるそう。ニュージーランド料理、とは謳わずに、ニュージーランドに住んでいたシェフがつくる、独自の美味しいもの、みたいな感じ。
ターゲットは米兵さん半分、地元の人半分のイメージ。夜だけじゃなくランチもやる。佐世保バーガーはやらない。
話しているうちに、開業する前のあのドキドキわくわくの感じを思い出してきた。やることだらけで大変だけど、頑張って欲しい。そして、ニュージーランドワインで繋がったご縁、大事にしたいと思った。
途中から隣の席に、韓国から名古屋に観光で来たカップルが座った。
そのカップルは半年ぶりのボクモで、二人とも日本への留学経験があって、日本語が上手。
ワインとラム肉が大好きで、ネットで調べて来てくれたのが半年前。今回が2回目の名古屋で、2回目のボクモ。選んでくれてありがたいです。
「長崎に行ったことはありますか?」
「ないけど行ってみたいですね」
そんな会話から盛り上がり、調べたらソウルから長崎は直行便が出ていることが判明。
「じゃあ私たち、店がオープンしたら行きますね!」
となって、カップルが開けたボトルワインをシェア。長崎観光の話や好きな韓国料理の話でわいわいと盛り上がった。
名古屋、長崎、ニュージーランド、韓国。
一気にカウンターで繋がった夜。これぞ飲食店の醍醐味だよなあ。
来年の2月にオープン予定の彼の店名は「+64」。わかる人にはわかる、ニュージーランドをしのばせたニクいネーミングだ。
調べたら長崎へはセントレアからも直行便があるではないか。
店はどんなふうに完成し、どんなメニューとどんなNZワインをあわせるのか。非常に気になる。